SimuLook · カメラからのノート

レシピを保存したとき、富士フイルムのカメラが実際に記録しているもの

富士フイルムのカメラでレシピをC1に保存すると、カメラがどこかに小さなファイルを 書き込んだように感じます。実際にはそうではありません。保存されているのは二十数個 の数値で、それぞれがカメラ内部の固有のアドレスに置かれています。そして、そのアド レスが七つのスロットのどれを指しているかを決めるセレクターがあります。

なぜ分かるのかというと、長い時間をかけて読み取ったからです。

まずスロットセレクター

カスタムスロットに関わる操作は、すべて一つのコントロールを経由します。そこにスロ ット番号(1から7)を書き込むと、以降の読み取りと書き込みはそのスロットに対して 行われます。セレクターを設定せずに値を読むと、カメラがそのとき選んでいるスロット の値が返ってきます。

この一点が、写真を撮る人が気づいていながらほとんど説明されない現象を説明します。 七つのスロットをまとめて読み取るアプリを使うと、なぜカメラが最初とは違うスロット になっているのか。各スロットを訪ねるために、セレクターを動かさざるを得ないからで す。丁寧なツールは元に戻し、雑なツールは戻しません。

その後ろに並ぶブロック

セレクターの後ろには、プロパティが連続して並んでいます。一つのプロパティが一つの 設定を持ちます。フィルムシミュレーション。ダイナミックレンジ。ハイライトとシャド ウ。カラー、シャープネス、明瞭度。二つのカラークローム系のコントロール。グレイン。 ホワイトバランスと二つのシフト軸、そしてホワイトバランスが色温度指定のときはその 色温度そのもの。スムーススキン・エフェクト。モノクローム カラーの二軸は、フィルム シミュレーションが白黒系のときにだけ意味を持ちます。

X100VIではこのブロックに24個のプロパティがあります。そのうち20個は特定できてお り、16個は画面に出せる値まで解読できています。残りの8個は欠落として報告します。

この欠落の数は意図的なもので、いちばん説明する価値のある部分です。

なぜ数値ではなく欠落を出すのか

4つのプロパティは、そもそも特定できていません。メニューで何かを変えると値が動く ことは見えますが、どの設定に属するかを言い切れるほど安定していません。もう4つは 位置としては置けますが、記録された数値をメニューの値へ変換する規則がありません。

8つ全部に数値を出すこともできます。見た目は完全になります。同時に、読み手には検 出のしようがない形で間違っています。もっともらしい誤った数値と正しい数値は、スマ ートフォンの画面上ではまったく同じに見えるからです。

だからアプリは8つの欠落と表示します。目に見える空欄は、確かめようのない数値より 価値があります。

数値は数値ではない

記録されている値が設定した値と一致することは、ほとんどありません。トーン系は分か りやすい例です。カメラは10分の1単位で保存するので、ハイライトの−1は−10として記録 されます。シャープネスとカラーも同じです。規則さえ分かれば、あとは算術です。

グレインはもう少し厄介です。強度とサイズが二つではなく一つのプロパティなので、 「弱・小」は組ではなく単一の数値になります。しかも書き込む値と読み戻す値が違いま す。グレインをOFFに設定すると、カメラはそのスロットがすでに持っていたサイズも一 緒に符号化した値を保存します。これは値を書き込んで読み戻したとき、どのスロットで も見たことのない数値が返ってきたことで分かりました。

高感度ノイズ低減は特殊なので、別の記事 にしました。

これで何ができるか

ブロックの地図さえできれば、あとはケーブル一本で足ります。スロットの中身を読み取 り、表示し、保存し、そして——すべての項目について実際に書き込んで読み戻す検証が済 んでいるカメラとファームウェアであれば——メニューに触らずにレシピをスロットへ書き 込めます。

時間がかかるのは検証のほうです。ブロックの地図は、設定がどこにあるかを教えてくれ ます。そこに書いた値をカメラが受け付けるかどうかは教えてくれません。実際この機体 では、受け付けないことがあります。ある設定が有効なあいだは別の設定がロックされ、 しかもカメラはロックではなく値のせいにするエラーで拒否します。これらは一つずつ、 拒否されることで見つけるしかありませんでした。

対応カメラを慎重に名乗る理由も、そこにあります。読み取りは機種ごとに較正します。 較正していない富士フイルム機は、接続して機種名を答えたうえで、何も表示しません。 もう一方の選択肢は、他人の数値をあなたのものとして見せることだからです。


富士フイルムのフィルムシミュレーションレシピを読み取り、書き込むアプリ「SimuLook」の開発中に書いたものです。 対応カメラを見る · ほかのノートを読む